脱炭素、原材料・燃料価格高騰、新興勢力の台頭で、
問われるグローバル二輪車メーカーの電動車戦略
世界38ヵ国の2021年BEV二輪車(バッテリーによる100%モーター駆動車が対象、車両登録不要及び25km/h以下低速車除くが、メーカー製品概要が特定できる車両を含む)販売台数は、購入補助金や税制優遇を導入しているインドや欧州を中心に増加し、前年比13万台増の358万台になりました。そのうち87%が中国ですが、二輪車大国のインドとインドネシアが経済成長とともに増加する石油輸入削減などを目的にBEV産業育成や販売促進政策を導入・強化していることから、今後、両国でもBEV二輪車市場が拡大することが予想されます。また、先進国でも、脱炭素政策の一環として優遇措置を導入しているほか、ホンダやヤマハなどの大手グローバル二輪車メーカーがGHG排出量削減や排ガス規制強化への対応が難しい50~125ccクラスを中心にBEV製品を相次いで投入します。
一方、BEV事業で先行する世界最大の電動二輪車メーカーYadea、新興電動二輪車メーカーのNIUやSuper SOCOなどの中国企業は、母国の安価な電動部品サプライチェーンと欧州のデザイン力を活用しながら、欧州を中心に海外事業を急速に拡大しつつあります。また、台湾でバッテリー交換システムのデファクトスタンダードとなったGogoroが、中国、インド、インドネシアなどの二輪車大国で現地大手メーカーと提携してグローバル事業に着手しているほか、インドの配車サービス最大手OlaがBEV二輪車1,000万台プロジェクトを開始するなど、さらに新興勢力が台頭してくる可能性があります。
しかし、各国における2030年に向けたBEV普及は、それぞれの国のエネルギー政策や市場特性に加え、ウクライナ侵攻したロシアへの経済制裁や米中デカップリングなど様々な影響を受けます。本報告書では、激変する世界情勢、規制、通貨、燃料価格、バイオ燃料、スクーター比率、主要各社のBEV戦略など様々な視点から2030年のBEV二輪車市場を展望します。貴社の二輪車事業計画立案などの一助としてご活用いただければ幸いです。
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![]() 第1章 |
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世界の主要二輪車市場における電動化の現状と将来展望
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◇先進国は脱炭素、新興国は石油輸入抑制で二輪車BEV化推進 |
◇世界38ヵ国における2021年BEV二輪車販売台数は360万台へ拡大 |
3. | 主要国における2030年BEV二輪車販売予測 |
◇各国の市場特徴や環境・エネルギー・産業政策などで大きく異なるBEV二輪車需要 | |
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![]() 第2章 |
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世界主要国・地域の二輪車電動化の動向と展望
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インド |
◇気候対策と石油輸入削減を両軸に二輪車を含む輸送セクターの電動化を推進 |
◇2021年の電動二輪車販売は過去最高の14.3万台に急増 |
インドネシア |
◇大手国営資源・エネルギー企業を軸に電動化を加速 |
◇BEV二輪車販売は市場シェア8割を占めるホンダのBEV事業展開次第 |
タイ |
◇2030年までにGHG排出量45%削減めざし、ZEV普及も推進 |
◇政府の電動化推進政策とガソリン価格高騰でBEV二輪車販売増加見込まれる |
ベトナム |
◇カーボンニュートラルに向けた交通・運輸分野における取組は限定的 |
◇BEV二輪車需要拡大はシェア8割を占めるホンダと都市部の二輪車乗り入れ規制の内容次第 |
フィリピン |
◇原油輸入増加による貿易赤字拡大を受け、EV産業育成をめざす |
中国 |
◇庶民の足として電動二輪車が普及している世界最大のBEV二輪車市場国 |
◇2022年から2024年にかけて電動自転車から電動二輪車へのシフトが加速 |
台湾 |
◇車両価格3~4割に相当する購入補助金が下支えするEV二輪車市場 |
◇二輪車市場におけるEV比率は2030年に30%前後まで上昇する可能性 |
欧州 |
◇イタリアやフランスなど欧州主要国が1,000~3,000€のBEV二輪車購入補助 |
◇車両乗り入れ規制が進む欧州、フランスは2030年にパリでガソリン二輪車乗り入れ禁止 |
◇オランダやフランスなどの需要好調で2021年にBEV比率が7%を超えた欧州二輪車販売 |
◇2024年のEuro5+導入を機に低排気量製品でBEV化が加速する欧州 |
米国 |
◇2030年までにGHG排出量50%以上削減めざす中、電動化を促進 |
◇10%の連邦政府税控除に加え、カリフォルニア州などもBEV二輪車購入補助 |
◇Zero MotorcyclesやNIUなどの新興メーカーがBEV二輪車販売で先行 |
◇2030年BEV二輪車需要は主要都市のゼロエミッション政策次第 |
ブラジル |
◇植林やバイオ燃料などでGHG排出量削減めざす |
◇BEV二輪車スタートアップVoltz Motorが事業を急拡大 |
日本 |
◇2030年度までにGHG排出量50%削減めざし、BEV導入を推進 |
◇商用向けBEV二輪車の製品投入が活発化、個人向けは中国製品が中心 |
◇二輪車各社の新規投入と排ガス規制強化で2022~2027年にBEV化が進展 |
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![]() 第3章 |
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新興企業の電動二輪車事業の概要と成長戦略
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◇スワップ式バッテリーでHaaSのビジネスモデル構築を目指す |
◇台湾域内ではGogoroがEV二輪車のデファクトスタンダードに |
◇交換式バッテリーや駆動ユニットなど独自のパワートレインに強み |
◇2022年以降、中国、インド、インドネシアの順に海外事業を本格展開 |
Ola Electric Mobilit Pvt. Ltd. |
◇2027年にBEV二輪車生産1,000万台をめざす |
◇2021年12月に自社製BEVスクーターOla S1シリーズを投入 |
Niu Technologies |
◇2021年に世界で電動モビリティ100万台を販売、生産能力200万台体制を構築 |
◇ラストワンマイルを含む電動モビリティ製品を強化して欧州を中心に海外事業拡大めざす |
Super SOCO |
◇オーストラリアVmotoと提携して欧州を中心に販売拡大 |
◇新規投入で電動モーターサイクル製品を強化、スクーターでバッテリー交換システム導入 |
Askoll EVA |
◇最量販市場イタリアで激しい競争に直面して販売が低迷 |
Scutum Logistic, S.L.(Silence) |
◇Silenceブランドを展開する欧州最大のBEV二輪車メーカー |
Zero Motorcycles |
◇欧米を中心に世界100ヵ国以上でBEV中大型スポーツバイクを販売するグローバルトップ |
雅迪科技集団有限公司(Yadea Technology Group Co., Ltd.) |
◇世界最大の電動自転車/BEVスクーターメーカー |
◇欧州を中心にプレミアムBEVスクーターの海外販売拡大めざす |
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![]() 第4章 |
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グローバル二輪車メーカーの電動化戦略 |
ホンダ |
◇世界販売の5割以上を占めるASEANとインドの事業を強化 |
◇Hondae:ビジネスバイクシリーズを先行投入、2024年までに個人向け3機種投入 |
ヤマハ発動機 |
◇プレミアム戦略で収益力を高めてカーボンニュートラル対応力を強化 |
◇2050年に二輪車のBEV比率90%をめざす |
スズキ |
◇新中期経営計画で2026年3月期に世界販売200万台をめざす |
◇二輪車事業の収益改善最優先の中、問われる電動二輪車事業戦略 |
カワサキモータース |
◇2021年10月に分社化、2030年に売上高1兆円、営業利益率8%以上をめざす |
◇2025年までに電動モーターサイクル10機種以上を投入 |
◇EV事業は自社ブランドVIDA、スタートアップAtherの2方面で展開、台湾Gogoroとも提携 |
Bajaj Auto |
◇自社初のEVスクーターChetakに続き、KTMと共同開発する電動モーターサイクルを投入予定 |
TVS Motor |
◇初のスクーターiQubeを皮切りにEV二輪車市場に参入、欧州でeバイク事業も |
BMW Motorrad |
◇Sustainability 2030目標達成に向けて電動化シフトを加速 |
◇次世代アーバンモビリティ製品ラインアップ拡充でプレミアムBEV二輪車トップめざす |
Piaggio |
◇主要市場欧州における二輪車リーダーシップポジションを強化 |
◇Piaggio 1を皮切りに交換バッテリーシステムを含めBEVスクーター事業展開を本格化 |
PIERER Mobility AG |
◇3ブランド体制とインドBajaj Autoとの提携で2022年グローバル販売40万台めざす |
◇インドBajaj Autoと48Vの低電圧電動二輪車を開発 |
Harley-Davidson(LiveWire) |
◇競争力のある製品セグメントと成長が見込める市場に注力して事業再建中 |
◇SPACを活用してBEVモーターサイクル事業LiveWireをIPO |
KYMCO |
◇自社の電動化ソリューションiONEXを拡大しGogoroアライアンスにキャッチアップ図る |