ITで協調しながら自動車会社と付加価値取り込みを競うグローバル部品企業
Daimlerが次世代開発の重要分野を示す語として作り出したCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング/サービス、電動車)という造語および概念は、誕生から4年ほどを経て、100年に一度と言われる自動車産業の大変革期を表す言葉として定着しました。当初危惧されたような劇的変化は2020年春現在起きていませんが、世界中の自動車メーカー、部品メーカーのみならず、ITなどの新規参入者による開発がCASEの各分野において進められている段階にあります。
こうした動きに対し、世界を代表するTier1メガサプライヤーも積極的にCASE分野の技術開発に取り組んでおり、膨大な研究開発費を投じてきました。しかし、2019年は米中貿易摩擦などによる景気後退が世界中で起き、これまで押しなべて好調であった自動車各社、部品サプライヤーとも業績が急激に悪化。さらに、2020年2月後半から新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行が懸念される事態となり、自動車産業にはさらなる逆風となる可能性が高まってきました。それでも、利益に結びつきにくいが巨額の投資を必要とするCASE分野の技術開発は継続せねばならず、各社の戦略や手腕が問われる時代に変わっています。
「日米欧10部品メーカーのCASE戦略」では、Bosch、Continental、ZF、Valeo、Schaefflerの欧州5社、Magna、BorgWarnerの北米2社、デンソー、アイシングループ、日立オートモティブシステムズと統合予定のホンダ系3社の計10部品メーカーの世界市場におけCASE戦略を詳しく分析します。
当案内をご高覧頂き、関係部署とも相談の上、ご採用賜りますようお願い申し上げます。
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CASE技術開発をリードするTier1部品メーカーの競争焦点
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総論: CASE開発をリードするTier1部品メーカーの開発戦略と競争焦点 | |
◇部品各社の業績比較 | |
◇部品メーカーの売上高ランキング、直近10年間はBoschとデンソーが1-2体制 | |
◇部品メーカーのR&D費、2018年トップはBosch | |
◇部品各社、いずれもCASE関連提携に積極的 |
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![]() 第1章 |
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欧州系部品メーカーの成長戦略 |
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1. Bosch: CASEは全方位対応、ソフトウェアとAI開発に注力、 ディーゼル車需要減退が不安要素に | |
◇自動車事業はトップ3人のうち2人が交代 | |
◇包装機械事業、高電圧バッテリー事業の売却 | |
◇尾を引くディーゼル排ガス不正関連問題 | |
◇自動車事業のR&D費は対売上高比1割前後を投資 | |
◇ディーゼル車敬遠、市場停滞の影響で人員削減も、次世代技術製品の生産には積極投資 | |
◇自動車事業の設備投資額は増加傾向 | |
2. Continental: ADAS/自動運転やコネクテッドに注力、 パワートレイン新会社は電動車事業強化を再表明 | |
◇ 2030年の利益最大化目指し、ADAS/自動運転、コネクテッド、 ソフトウェアベースシステムに注力 | |
◇売上高拡大基調は継続も、収益率は悪化 | |
◇ 電動車事業への注力を改めて表明、BEV/PHEV向けシステムのほか、 P0、P2MHEVシステムを重視 | |
◇DSRC/C-V2Xに対応可能な製品を2020年代初旬に量産化へ、サイバーセキュリティも強化 | |
◇ロボットタクシーを生産開始、私有車向けではレベル2の技術に注力 | |
◇レンタカー企業などにデジタルドアオープナーシステムを供給 | |
◇ ADAS、モビリティ分野、タイヤ等の生産体制を整備、 アジア事業売上高拡大に向けた供給能力拡大も | |
3. ZF: Wabco買収で売上高は400億ユーロ規模に拡大、 提携活用でCASE技術の提案能力向上図る | |
◇Scheider体制下でもM&Aによる事業増強は継続 | |
◇Wabcoの買収 | |
◇Wabco買収で商用車ブレーキ事業強化、CASE関連で提携を活用 | |
◇CASE関連中心にR&D機能を拡充 | |
◇現地化と戦略的パートナー化を進める調達戦略 | |
◇VCのZukunftVenturesを活用 | |
◇世界各国で生産拠点を新設・増強を継続 | |
◇主力の8速ATは第4世代へ、自動運転とコネクテッドは提携中心に開発 | |
4. Valeo: 電動車、ADAS/自動運転向けシステムに注力、 M&Aや提携による事業強化も推進 | |
◇電動化、ADAS軸に成長目指す | |
◇売上高の10%強を研究開発に投資 | |
◇電動化、ADASを中心に生産体制を整備 | |
5. Schaeffler: 提携や買収を通じてCASE事業を強化、 特に電動車と都市向けモビリティ向け技術に注力 | |
◇電動車やマイクロモビリティを重視する戦略 | |
◇ 電動車向けではハイブリッドモジュールや電動アクスル、 サービスでは都市向けモビリティに注力 | |
◇2018年に売上高は1.6%増、EBIT率は9.7%と目標未達 | |
◇自動車OEM部門ではR&D費抑制を推進 | |
◇電動化、自動運転、サービスの分野に注力 | |
◇電動化や自動運転の分野で協業を積極活用 | |
◇欧州を中心に拠点最適化、調達ではプレミアムサプライヤーを選定 |
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![]() 第2章 |
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北米系部品メーカーの成長戦略
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1. Magna: 電動化と自動運転技術の開発強化で収益拡大狙う、 完成車組立まで担える生産体制なども強み | |
◇M&A通じて収益拡大図るも、世界的な自動車生産の減少が業績に影響 | |
◇中国事業を強化、電動化対応で売上高の底上げ図る | |
◇軽量化技術の開発などを通じて受注増図る | |
◇変速機Getrag買収などM&A通じて事業強化 | |
◇生産能力増強、新たな需要への対応図る | |
2. BorgWarner: ターボチャージャー事業強化と電動化対応図る、 M&Aなど通じ開発領域の幅拡げ収益拡大目指す | |
◇環境規制対応で電動化製品の開発強化 | |
◇機電一体型パワートレインなど主力製品に | |
◇中国で電動化需要高まる | |
◇アジア地域で生産能力増強 |
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![]() 第3章 |
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日系部品メーカーの成長戦略 |
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1. デンソー: 世界トップを競うがモジュール化戦略で欧米に遅れ | |
◇2025年度連結売上高7兆円、営業利益率10%目指す | |
◇CASE関連を中心に拡充図る研究開発戦略 | |
◇ 2019年度4~12月期業績概要:アジア市場の減速と為替影響が響き減収減益、 通期予想を下方修正 | |
◇2023年コネクテッド事業売上高を全体の2割に拡大 | |
◇CASEでは電動化・自動運転を注力分野として強化 | |
◇「先進安全・自動運転」、「コネクテッド」、「電動化」3事業で他社とのR&D連携/提携拡充 | |
◇経営改革方針に沿った組織再編を推進 | |
2. アイシングループ: CASE時代のシステムメーカーへECU強化が鍵 | |
◇バーチャルカンパニー制からカンパニー制へ | |
◇アイシングループ目標は2023年売上高4.5兆円超 | |
◇グループの中核となるアイシン・エィ・ダブリュ | |
◇パワートレインカンパニーは電動化対応を強化 | |
◇走行安全カンパニーを通じた自動運転対応 | |
◇車体カンパニーは快適・利便性向上図る製品を充実 | |
◇電子センターは横串で全体の電子化を牽引 | |
◇拠点統合と生産能力増強を並行し事業効率を向上 | |
3. 日立オートモティブシステムズ/ホンダ系3社: 2020年秋に経営統合へ、 事業規模拡大でCASE対応など技術力強化 | |
◇経営統合で欧米系メガサプライヤーに対抗 | |
◇4社とも減収減益傾向鮮明に | |
◇CASE戦略は日立製作所・ホンダとの連携重視 | |
◇欧米系自動車メーカーからの受注拡大が課題 | |
◇日立AMS、自動運転/ADAS関連の開発目立つ | |
◇ケーヒン、電動化対応とインド市場攻略へ | |
◇ショーワ、製品の高付加価値化目指す | |
◇日信工業、アルミ軽量化技術を強化 |