COP25機に加速、2050年CO2排出ゼロに向けた合成燃料(eFuel)普及の可能性を技術・政策面から展望
新型コロナウィルス感染対策に追われる世界の自動車産業は、各地で感染防止と市場縮小に対応した生産停止に追い込まれています。温暖化が原因とみられる自然災害とともに、新型ウィルスの感染もまた、地球環境変化がもたらす災厄ととらえることが可能であることを考えると、2020年代は人類にとって地球温暖化防止に向けた実効力のある具体的な行動が問われる新しい10年と言えます。
世界の人為的CO2の約20%を排出する自動車業界は燃費低減や輸送効率向上に努力して来ましたが、使用段階でCO2排出が少ない電気自動車やプラグインハイブリッド車、水素自動車等は価格が高く、一般消費者に受け入れられていません。ITや最新の通信技術を駆使して輸送積載効率の向上や渋滞緩和努力も始まっていますが、効果は限定的です。
こうした中、注目されているのがeFuelです。eFuelは再生可能エネルギーの余った電力で水から生成されるカーボンフリー水素と、大気中や工場から排出されるCO2を反応させて燃料にする合成燃料。しかも、eFuel生成過程でワックスや化学薬品が生成されるため、カーボンマイナス燃料にもなります。ガソリンやディーゼル燃料に混入(ドロップイン)するだけで走行中の自動車をエコカーに変えてしまうことができるので、既存のエンジンを使用し続けることが可能になります。さらに良いことに、eFuelには不純物が全く含まれないので、排ガス対策を簡単・低コストにすることが可能です。
夢の燃料と言えますが、普及に向けた課題としては、再生可能エネルギーを使用しないとカーボンプラスになること、水電解槽や触媒、分離膜分野で一層の技術開発、素材開発が必要になります。ただ、普及に至る過程で、水素コストの低減、石炭や石油の改質・クリーン燃料化、等様々な段階で温暖化効果ガス抑制につながる技術蓄積が期待できます。
eFuelの実用化・普及拡大が進めば、エンジン・トランスミッションなど主要部品産業の存続が可能であり、内燃機関車の性能アップ、低燃費等のブラシアップの重要性が高まります。本書がeFuelの理解と認識を深める一助となり、eFuel関事業戦略策定のための参考資料になると確信いたします。是非ご活用ください。
※ 画像をクリックすると大きいサイズでご覧になれます。
▼1章へ | ▲PAGE TOP |
![]() 総論 |
|
eFuel普及によるCO2排出削減効果と内燃機関の復権
|
▲総論へ / ▼2章へ | ▲PAGE TOP |
![]() 第1章 |
|
COP25を機に加速する2050年CO2排出削減政策 |
京都議定書からパリ協定、COP25の新目標 |
欧州の自動車CO2削減ロードマップ |
▲1章へ / ▼3章へ | ▲PAGE TOP |
![]() 第2章 |
|
eFuelの原理と可能性
|
eFuelとはなにか |
eFuelの基本原理 |
eFuelメリットと将来効果 |
eFuel普及の損得勘定 |
▲2章へ / ▼4章へ | ▲PAGE TOP |
![]() 第3章 |
|
eFuel現実化政策 |
北欧諸国の再生可能エネルギー発電増と活用提案 |
ドイツ企業連合による合成燃料活用努力 |
Nordic Blue Crudeの取り組み |
Volvo、バイオ燃料の使用拡大とeFuelへの期待 |
水素FCEV普及にもプラス効果のeFuel現実化促進 |
▲3章へ / ▼5章へ | ▲PAGE TOP |
![]() 第4章 |
|
eFuel普及シナリオ
|
eFuel普及シナリオと各国の役割 |
eディーゼル、eガソリンの可能性と変わる排ガス対策 |
排ガス対策でも有効なeFuel |
航空機燃料に対するeFuel採用率義務付け議論 |
▲4章へ / ▼6章へ | ▲PAGE TOP |
![]() 第5章 |
|
世界自動車・部品、化学産業界のeFuel戦略
|
日本産業界の取り組みとCO2削減ロードマップ |
eFuel実現に向けたキーテクノロジーと日本企業 |
日本産業界の新たな課題 |
▲5章へ / ▼7章へ | ▲PAGE TOP |
![]() 6章 |
|
eFuel実現に向けた技術課題
|
Electrolyser(水電気分解機、水電解槽) |
触媒 |
分離膜、CO2回収装置 |
eFuelプラント |
▲6章へ | ▲PAGE TOP |
![]() 第7章 |
|
eFuel普及による世界電動車戦略へのインパクト
|
幅のあるeFuelの将来価格試算 |
eFuelコスト目標達成、普及最速シナリオ |
eFuelコスト目標未達、供給規模が限定的な現実シナリオ |
eFuel実現が遅れた場合のリスクヘッジ |