自動車産業を取り巻く環境は大きな変革の波のなかにあり、新たな法整備やルール作り、政策策定の動きは今後さらに活発化する状況です。
気候変動問題では温室効果ガス(GHG)削減の要求が強まる一方で、大気汚染問題を理由に、引き続きNOxやPMなどの排出ガスの低減が求められており、リアルワールドにおける有害物質の排出抑制に向けて法規制の策定・導入が進んでいます。米中間の覇権争いも世界全体に影響する重大なテーマで、貿易・通商政策の対立が深まっているだけでなく、技術競争、サプライチェーンの再編などにつながっています。コネクテッドや自動運転といった自動車に新たな付加価値を与える領域では、各国・地域間で法令作りが進んでおり、主導権争いが激しさを増しています。新型コロナウイルスのパンデミックを機に広がっているDX(デジタルトランスフォーメーション)も社会のあり方を変える力を持っていることから社会や企業がその恩恵を受けられる仕組み作りの必要も出てくるでしょう。
「FOURIN世界自動車法政策月報」では、気候政策・環境規制、安全規制、自動運転等の基準化・標準化、自動車税制、投資制度、貿易・通商、経済安全保障などに関わる最新動向を毎月お届けします。創刊から5年を迎えるなか、独自の視点で掘り下げたレポートを提供いたします。是非ともご活用ください。
最新号の目次を御案内します。
「FOURIN 世界自動車法政策調査月報」の構成をご案内します。
FOURIN 世界自動車法政策調査月報の特長
FOURIN 世界自動車法政策調査月報の構成
「視点」:毎号1本(各号1ページ)掲載
「特集」:世界の自動車関連法規・政策動向を1~3本(各4~12頁程度)
「定常レポート」:毎号7~10本(各1~6頁)
短信:毎号8~10頁程度
FOURIN 世界自動車法政策調査月報 2023年12月号 (No.75) | ||
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米国自動車産業界は、需要が見通せない中での製品のBEV 関連投資、労働者の製造業離れ、賃上げ圧力などが大きな課題となっている。特に賃上げ圧力は深刻で、UAW との労使交渉が難航したDetroit 3 各社は、2023 年9 ~10 月に複数工場で稼働停止を迫られた。Detroit 3 との労使交渉は、最終的に双方合意で妥結したものの、UAW側の過度な要求は、製造業の米国離れを加速させる要因になり得る危険性もある。2024 年は米国大統領選挙の年である。民主党、共和党ともに、米国製造業の再興を強調する選挙戦が窺える。需要とのミスマッチが課題になりつつあるBEV シフト、米国製造業のコスト高問題、労働者の製造業離れなどをどう解決していくか、が問われている。
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ここ数年の間に、コロナ禍、半導体不足、ウクライナ戦争とエネルギー価格高騰など幾多の苦難が世界を襲った。これにより政策的には自国ファースト主義が浸透し、自動車産業では並行するタイミングで電動車シフトが世界で進んだ。世界の自動車産業がBEV中心となれば、これまでのような国際分業体制は成り立たなくなる可能性があり、海外展開を軸に進めてきた日本自動車産業の成長戦略は見直しを迫られている。日本の自動車産業はBEVでは後塵を拝することになるが、まだ十分に活かされていない環境技術を持っている。これまでに世界で培った信頼関係も、成長戦略を描き直す上では重要な財産となるだろう。
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欧州議会は2023年11月9日、排ガス規制Euro 7案を可決した。乗用車の排ガス基準値はEuro 6水準をほぼ維持し、RDE(実路走行排ガス)試験の条件も欧州委員会原案より緩和した。大型車にも台上試験とあわせてRDE試験を導入するが、原則として国連規則に準拠するものとした。一方で、ブレーキ粉塵とタイヤ摩耗、駆動用電池の耐久性などを新たに規制対象とした。導入時期は乗用車/バンの場合、新型車は関連二次法の発効後24ヵ月後、継続生産車は36ヵ月後となる。大型車の場合、それぞれ48ヵ月後、60ヵ月後となる。今後は、欧州議会、欧州理事会、欧州委員会の三者協議に移る。合意を経て正式に成立すれば、その後に関連二次法の策定が進められる。
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半導体に始まった米中デカップリングが、EV用バッテリーの分野へと拡大している。バッテリー生産では中国などアジア勢が支配的な位置にあるが、米国はインフレ抑制法(IRA)で補助金条件としてバッテリー原産地要件を設けることでポリティカルにクリーンでない製品をブロックしようとしている。こうしたなか、中国は先端半導体やバッテリー生産に必要な鉱物資源の輸出規制を相次ぎ打ち出している。2023年8月からガリウムとゲルマニウムの輸出が許可制となり、12月から黒鉛もその対象になる。レアアースも10月末から輸出にあたり届出が必要となった。IRAで進んだ北米への生産拠点の誘致のブレーキとなりうる。
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中国の軍民融合政策への対策として米国が先端半導体/半導体製造装置の対中輸出規制を実施してから1年。昨年の輸出管理規則(EAR)の改正は、当初の狙いだった中国だけでなく米国や同盟国の関連産業の業績にも打撃を与えた。また、解釈をめぐる現場の混乱を招き、第三国を経由する迂回輸出などが抜け穴として活用されるようにもなった。改めてEARを改正し、先端半導体の定義を整理した上で規制対象をロシアやイランなどの懸念国に拡大する一方で、機微度の低い製品は規制対象外であることを明確化した。機微度の低い製品には、スマートフォンなどのコンシューマー製品向け製品が該当するとみられている。
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FOURIN 世界自動車法政策調査月報 2023年11月号 (No.74) | ||
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英国政府は小型自動車の内燃機関搭載車の新車販売を2030年に禁止する計画であったが、2035年に先送りした。英国は欧州の自動車大国のひとつではあるが、国内販売の過半数をEUからの輸入で賄っているため、環境規制でEUに先んじようとすることにそもそも無理があった。また、国内生産車の大半を輸出する輸出国でもあることから、世界的なトレンドとなる「2035年脱炭素化」への対応が生産面でも必要とされるが、国内自動車産業の電動化転換は途上にある。課題となる電動車転換であるが、スナク政権は発足から1年の間にTataのギガファクトリー誘致などで実績を挙げている。そして、早ければ年内にも電動車のバッテリー戦略が発表される運びとなっている。
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中古車販売大手ビッグモーターによる自動車修理の保険金の不正請求が2023年8月に明らかになったが、不正慣行が拡大した要因のひとつにロシア情勢が絡んでいることも無視できない。ロシアではウクライナ侵攻後の経済制裁により先進国メーカーの新車供給が途絶えたことにより、元々人気の高かった日本の中古車の需要が拡大した。それが日本国内の中古車の需給拡大と価格上昇にも波及したのである。中古車業界では元々、繁忙期になると修理・点検が手抜きされる傾向があったが、極端な需要の変化がそれを悪化させた。もちろん、それが言い訳として認められるはずもないが、消費者の信頼回復のための健全なサービススキームの構築が求められている。
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メキシコ政府が2023年8月、暫定措置として鉄鋼など工業製品392品目のMFN関税率を最大25%に引き上げた。鉄鋼製品の世界的な供給過剰を受けた国内産業保護であるが、米国が第232条に基づき賦課する鉄鋼・アルミニウムへの追加関税に足並みを揃えたという意味もあろう。このように、メキシコは米国の隣国であるが故に政策的に難しいかじ取りを迫られる。一方、米国に隣接するという地の利は強みでもあり、メキシコへのニアショアリング(事業拠点の近隣移転)が進んでいる。こうした流れを受けて、メキシコ政府は2023年10月に投資呼び込みの税制優遇策が発表した。輸出製品を製造する企業に対して、固定資産投資の最大89%の税額控除を認める。
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日本でも経済安全保障推進法が2022年5月に成立したことで、経済安全保障の法整備の基礎が整った。①重要物資の安定的な供給確保、②基幹インフラの安全性・信頼性の確保、③先端的な重要技術の開発支援、④特許出願の非公開、を軸に取り組む。自動車産業に関わる経済安全保障を考える上でひとつのポイントとなるのは、中国との付き合い方であろう。外国企業に対して差別的な慣行が残り、業界によっては収益の確保が難しくなってきた中国との今後の付き合い方を検討し、撤退を決断するメーカーも出始めている。一方、グローバルサプライチェーンの構築を考える上で、進出先での現地企業との付き合い方という点で、中国系メーカーには見習うべき点が多いと言える。
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FOURIN 世界自動車法政策調査月報 2023年10月号 (No.73) | ||
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米国でトレーサビリティ、技術、資本、人権と多層的に中国企業のバッテリーを規制するシステムの構築が進んでいる。インフレ抑制法(IRA)、ウイグル強制労働防止法に加え、中国系企業のバッテリーを税制優遇からあからさまに排除する議員立法も提案されている。しかし、米国がバッテリーの技術、生産能力、価格のいずれにおいても中国に及ばないことを考えると、対中半導体規制で収めたような成果は望めないのではないだろうか。バッテリーに関しては、中国をどこまで許容するかの明確化が得策と言えよう。
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2023年9月、米国デトロイト地区で2つの大型展示会、デトロイトモーターショーとバッテリーショーがほぼ同時期に開催された。いずれも自動車業界の今後を占う上で重要な展示会であるが、現地では報道陣の集まり具合や客足から大きな温度差を体感した。米国連邦政府の自動車の電動化政策に基づく巨額のインセンティブに電動車関連業界が群がる一方、BEVの市場需要と収益性を冷静に判断する既存の完成車メーカーはBEVをあくまで選択肢のひとつと捉えていることが鮮明にされた。そして、メキシコ動向からも目が離せなくなっている。
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中国で2023年7月に小型商用車の第4段階燃費規制案が発表された。商用車は乗用車と比較して保有台数こそ少ないものの、稼働率が高く走行距離が長い。このためこのセクターの規制強化は環境政策としても効率的であるが、中国の小型商用車の燃費規制は先進国よりも15%劣る(2025年時点)とされる。第4段階では、燃費規制の強化と同時に企業平均燃費(CAFC)制度の導入などにより、小型商用車の燃費の先進国水準への到達を目指す。
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米国で初めて自動車の「修理する権利」が法制化されたマサチューセッツ(MA)州で、その適用をテレマティクスデータへのアクセスにまで拡大する「データアクセス法」が可決されたのは2020年のこと。しかし、無制限なデータアクセスはサイバーセキュリティ上のリスクが懸念されるとして自動車業界側がMA州を提訴したことで膠着し、未だ施行されていない。データアクセスを「無制限なリモート」ではなく「近距離」に制限することでサイバーリスクは軽減できるとする妥協案がNHTSAとMA州の間で成立し、ようやく施行にめどがついた。
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米国の経済安全保障政策の軸は半導体である。半導体をめぐり米中摩擦の先鋭化が進むが、今後この流れが自動車産業に波及する可能性もある。半導体産業において川下需要の乏しい日本は有力な生産投資候補地ではなかったが、政府補助金によりTSMCの熊本への誘致に成功。台湾への武力攻撃リスクを考えた時の避難先としてのニーズが意識されるなかで、TSMC第2期、そして第3期まで可能性が出てきた。日本政府は巨額の補助金を負担することになるだが、時代は貿易戦争から補助金戦争に移っている。
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