ロシアによるウクライナ侵攻が世界を震撼させています。同時に、この戦争が世界に及ぼす損害は巨大です。戦争がもたらす自動車産業を含めた経済・産業界への損失の実態を明確にすることを通じて凄惨な戦争の一日も早い終結につながればとの思いから当調査報告書を企画いたします。
ロシアは世界有数の自動車生産・販売国です。世界最大規模の中国や米国には劣るものの、ソ連時代に記録した過去のピークで220万台、ロシア時代に入ってから石油高騰を背景に一時的に320万台規模に拡大した国です。現在の販売は200万台弱で推移していますが、1.5億人の人口と1,700万㎢の国土面積からすると、巨大な潜在成長力を持つ自動車大国という性格に変わりはありません。ソ連時代の人口3億人、国土面積2,200万㎢からすると潜在規模は縮小していますが、自動車保有台数は5,300万台で、国内生産車、新車輸入車で国内の自動車需要を賄うことができず、他国からの多大な中古車輸入を通じて国内自動車需要を充足してきました。
ウクライナも4,000万人の人口規模と60万㎢の国土面積から一定規模を持つ自動車産業国です。現在、年間の自動車新車販売台数は10万台前後ですが、過去のピークが70万台弱、保有台数は1,000万台を超えており、中東欧地域ではロシア、ポーランドに次ぐ自動車産業国です。将来、自動車産業を保有することが可能な国の一つで、先進国同等までの経済発展を背景にすれば200万台近い新車販売が可能な国です。
既に、この将来発展への期待からワイヤーハーネス等一定規模の自動車部品産業の集積も始まっていました。その潜在的な成長力を持つ自動車産業国が戦争に巻き込まれることで発生する直接・間接の被害は計り知れません。製造、販売への影響、部品生産・供給体制への影響、さらには中古車販売を通じた西欧新車市場への影響を考えると、その影響は中東欧、欧州全域に及びます。
しかし、最大の影響は世界のエネルギーバランスに及びます。周知の通り、ロシアは世界最大規模の石油・石炭・天然ガスの生産・輸出国です。そのことが、ロシアをして自らの主張を武力で押し通すことが可能との勘違いを生む背景になったことは否めませんが、現実に世界のエネルギー需要をロシア産の安価な資源が支えてきたことは事実です。
世界がこの戦争に反対し、様々な分野で脱ロシア化を進めるということは、世界各国がエネルギー政策を見直すことに他なりません。ロシア最大のエネルギー輸出先となる欧州のうち、安価なロシアの資源を最大限有効活用することで国際競争に勝ってきたドイツ産業界への影響は甚大です。従来通りの安価な資源・エネルギー源、部品調達源を陰で支えてきた前提が変わりました。今次ウクライナ戦争は巨大平和産業の存立基盤を大きく覆すものとなりました。
当調査報告書は、ウクライナ戦争の背景とその影響について多面的な調査分析の下、世界の自動車産業が短期・中期で対応すべき課題と、将来に向けて準備すべき施策を明確にするものです。コロナとウクライナ戦争後の新しい時代の自動車産業経営にお役立てください。
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![]() 第1章 |
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ウクライナ戦争の世界自動車産業への影響
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泥沼化する戦争の背景と影響 インタビュー |
中東欧自動車産業への直接のインパクト |
世界生産・販売へのダメージと回復に必要な時間 |
長期化する可能性と準備 |
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![]() 第2章 |
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世界のエネルギー政策への影響
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変容する優先順位 エネルギー安保は国家安全マター |
地球環境保護と安全保障の両立 |
カーボンニュートラル戦略への影響 |
将来エネルギーバランスと各国の戦略転換 |
自動車環境政策への影響展望 |
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![]() 第3章 |
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ウクライナ・ロシア自動車産業とダメージ
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産業規模と産業基盤への影響 |
部品依存度 |
市場依存度、間接的市場依存度 |
材料依存度、エネルギー政策へのインパクト |
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![]() 第4章 |
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欧州自動車産業への影響 |
ドイツ自動車産業の危機と新戦略 |
エネルギー依存度と影響 |
材料・資源・部品産業への影響 |
直接・間接的な販売への影響 |
脱ロシアで覚悟すべきコストアップ |
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![]() 第5章 |
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日本自動車産業への影響
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ロシア事業の性格と日本自動車産業への影響 |
高収益欧州販売戦略の見直し |
中古車販売規模と今後の影響 |
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![]() 第6章 |
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世界自動車産業への影響の可能性
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世界経済への影響と世界自動車市場への影響 |
自動車OEMの東から西への投資シフトの可能性 |
脱ロシアから中国デカップリングへ影響拡大の可能性 |
中国デカップリングとの本質的な違い |
日本自動車産業に問われる新たな役割 |