世界事業環境の変化に対応する2段階EV開発を緊急・特別調査
世界の自動車産業界における事業環境は急激に変化しており、中国でのNEV規制導入や米国California州でのZEV規制強化へ の対応が、電動車戦略における当面の重要な課題となっております。PriusをはじめとしたHEVで電動車市場をけん引してきたトヨタにとっても、HEVがNEVやZEVの対象から外れることから、EVやFCEVの早急な製品拡充が求められています。ZEVにおいては、これまでトヨタはFCEVを「究極のエコカー」と本命視し開発に取り組んできましたが、直近の水素インフラ整備の遅れ等を鑑み、当初の想定よりもFCEVの普及が遅れるとの見方を強めたことで、2020年に向けたZEV戦略ではEVに重心を置きつつあります。
トヨタのZEV戦略は、短期的にはNEV/ZEV対応が主眼となりますが、中長期的な視点では、持続可能な社会の実現に向けた重要な戦略の1つと位置付け、「トヨタ環境チャレンジ2050」(2015年10月発表)における「新車CO2ゼロチャレンジ」を達成するために不可欠な要素となっています。トヨタは同チャレンジの下で、ZEVの着実な普及に取り組む意向で、多様化するニーズに幅広く対応しながら、かつ収益を伴った事業として育成する考えです。現状では特に収益面でネックとなっている電池への取り組みをライフサイクル全体で進める意向で、更には新しい枠組みでの電池コスト回収に向けた取り組みも検討しています。
当調査報告は、トヨタのEV世界戦略を製品・開発・調達・生産・販売の各視点で調査・分析しております。各方面への数年にわたるヒアリング調査から入手した情報等に基づき、トヨタの最新のEV事業への考え方や取り組み動向について、独自調査に基づきレポートいたします。
当案内をご高覧頂き、関係部署とも相談の上、ご採用賜りますようお願い申し上げます。
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![]() 総論 |
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トヨタの電動車世界戦略
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HEVを電動化技術のベースと位置付けZEVにも技術展開 | |
・「21世紀のクルマ」の議論からPriusプロジェクトが始動 | |
・初代Prius投入により、THSによるフルHEV量産を開始 | |
・2代目Prius以降、THSの既存モデルへの採用を本格化 | |
・ 3代目Priusで国内最量販車の地位獲得、Aqua投入で更に規模拡大、 乗用車へのフルラインでのHEV展開を実現 | |
・4代目PriusでTNGA思想を導入、走行性能を向上しながら40.8km/ℓを実現 | |
・THSは大きく分けて4種類だが、今後更に多様化進む | |
・日本:2012年以降の販売は70万台弱で横ばい続く | |
・北米:ガソリン価格の変動で需要増減、近年は伸び悩み | |
・欧州:DEから電動車への需要シフトを追い風に伸長 | |
・その他地域:中国販売が牽引し北米に迫る規模に拡大 |
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![]() 第1章 |
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世界で厳格化する環境規制とEV開発競争
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2020年以降に世界で本格的なEV展開が始まる | |
◇世界規模で進む環境規制強化 | |
◇米国のZEV規制 | |
◇中国のNEV規制 | |
◇脱内燃機関が進む欧州 | |
◇アジアにおける電動化政策 | |
◇主要自動車メーカーによるEV開発と発売計画 |
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![]() 第2章 |
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トヨタのZEV世界戦略
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2030年にEV・FCEV合計で100万台以上の販売を目指す | |
◇EV開発の歴史 | |
・環境問題、エネルギー問題への備えからEV開発に着手 | |
・2010年代にEV開発を再び本格化 | |
・中国NEV/米国ZEV対応でEV開発の重要度高まる、同時に新事業創出を見据えたEV開発も推進 | |
◇FCEV開発の歴史 | |
・EVとほぼ同時期にFCEVの開発に着手 | |
・FCEVを将来のZEVの本命と位置付けフルライン展開に取り組む | |
・中国NEV規制対応等で、EVを電動車戦略における当面の最重要課題と位置付け | |
・EV戦略強化に向け他社との提携活用を推進 | |
・EVを活用した新事業戦略「Autono-MaaS」 | |
・次世代交通社会実現に向けHa:moの取り組みを展開 |
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![]() 第3章 |
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トヨタの第1段階EV開発
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中国NEV・米国ZEV対応でSUVベースEVを開発 | |
・中国NEV対応がEV戦略の最優先テーマ | |
・米国向けに中型クラス以上のEV投入を検討 | |
・モーター:コスト競争力と性能で優位性有 | |
・インバーター:HEVで蓄積した高い制御ノウハウを流用可能、コスト競争力でも優位性大きい | |
・バッテリー:EVCASでの取り組みとパナソニックとの協業を活用しEVに最適な電池を研究、最大の課題はコスト | |
・電動基幹部品の調達先:既存の調達網を踏襲 |
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![]() 第4章 |
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トヨタの第2段階EV開発
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EVラインアップ拡充、SiC・全固体電池など次世代技術実用化 | |
・「TOYOTA Concept-愛i」でクルマの新しい価値を提供 | |
・パーソナルモビリティで採用されている電動技術 | |
◇電動基幹部品の中長期開発・搭載方針 | |
・モーター:HEV用モーターを最大限活用するが、上級EV向けには複数の方向性で出力向上に対応 | |
・インバーター:中長期的にもHEV用と共有、SiCパワー半導体によるPCU小型化や航続距離伸長に期待 | |
・バッテリー:当面はパナソニックとの協業が調達の主軸、全固体電池をゲームチェンジャーと位置付け開発強化 | |
◇EVラインアップ・グローバル販売地域・販売台数予測 | |
・2030年まではEVがZEV戦略の主力、中国市場での成否がZEV販売100万台達成のカギ握る | |
◇「トヨタ環境チャレンジ2050」 |
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![]() 付録 |
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付録 |
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①トヨタの電動車グローバル販売台数(地域別/モデル別) | |
③主要電動モデルのサプライヤーリスト |
<用語の説明(アルファベット順)>
DE |
:Diesel Engine | EV |
:Electric Vehicle | ||
FCEV |
:Fuel Cell Electric Vehicle | HEV |
:Hybrid Electric Vehicle | ||
NEV |
:New Energy Vehicle | PHEV |
:Plug-in Hybrid Electric Vehicle | ||
THS |
:Toyota Hybrid System | ZEV |
:Zero Emission Vehicle |