世界自動車市場(87ヵ国)は、コロナ禍で低迷した2020~2022年実績の8,000万台前後から、コロナ禍前の2019年水準(9,210万台)に向けた回復基調にあります。FOURIN試算では、2024年は前年比0.8%増の8,907万台と微増ですが回復基調を維持し、2025年には9,110万台と、2019年以来の9,000万台超になると見込んでいます。米国で新政権が2025年1月に発足する予定となっており、世界的な市況変化は見通しにくいですが、世界自動車販売台数が過去最高の2017年実績(9,620万台)を上回るのは2028年以降になるとみています(2024年12月時点)。
世界的に注目を集めるBEV市場については、2023年半ば頃まで環境規制の強化もあり、欧米先進国では主要自動車メーカーの多くが、BEV製品の開発から生産投資、市場投入を急速に進める傾向にありましたが、高止まりするバッテリー価格に伴う車両価格の高さ、EV充電インフラの整備遅れなどにより、補助金抜きに需要が伸びないという、需給バランスの不一致が生じています。欧州では電動車補助金やメーカーによる値引きがBEV市場規模の維持には不可欠であり、長距離移動の機会が多い米国では利便性の面から需要減退の傾向が表れています。更に米国においては、新大統領に就任するトランプ氏が、従来の電動車に対する補助金(税控除、最大7,500ドル)の廃止に言及しており、BEV市場にマイナス影響が出る見通しです。
2024年時点で世界的にも影響が出ている米中対立の構図は、米国トランプ政権発足で更に悪化すると考えられます。中国やロシアは、反米親中のブラジルLula政権とともに、米国を中心とした旧西側諸国(先進国)に対抗する形で、新たな協力関係の枠組み作りを進めています。2025年は「激変の年」になる可能性があり、産業界全体では、貿易面を考慮したサプライチェーンの再構築に加え、生産体制や調達システムなどに至るまで見直しが迫られるという状況も想定しておく必要があります。
『世界自動車統計年刊2025』は、世界80ヵ国以上の国の生産・販売・輸出等基礎統計と自動車政策、経済状況を取りまとめ、国別に2024年の自動車市場や生産の状況を解説し、将来の展望を報告。また世界主要地域・国の電動車販売台数を中心に関連統計を整理し解説します。
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