サプライチェーンやエネルギーの課題続く中で脱炭素/DX戦略を維持
ドイツの主要乗用車メーカー各社とも、EUの車両CO2規制強化、将来的なZEV販売義務化を見据え、2030年代にかけBEV販売比率を急速に高めていく方針です。各社とも、長期的には、BEVを中心にライフサイクル全体でのカーボンニュートラル化実現を目指し、必要な技術強化、サプライチェーン整備及び、カーボンニュートラルを前提とする事業体制への移行を進めています。
一方でロシアによるウクライナへの侵略により、ロシアからの天然ガス供給への依存の深刻さが浮き彫りとなりました。緊急措置として、石炭火力発電の継続による電力エネルギー確保に動いていますが、再生可能エネルギー供給を増強しても特に冬場のエネルギー安定確保に課題が残ります。輸送車両及び工業のカーボンニュートラル化に向け,グリーンな水素の供給及び輸入を増やし、Eフューエルの量産化に向けた取り組みを推進しています。新車販売100%ZEV化及びICE車販売禁止を目指すEUの方針に対し、ICE車のCO2フリー化を実現できるEフューエル利用をサポートする何らかの制度の導入に向けた努力も続けられています。
ドイツ主要OEM各社とも、BEV中心でライフサイクルカーボンニュートラル化の実現を目標にするとともに、BEVに内製のOSを実装し、OTAで車載機能を更新、拡張できる新たな機能やサービスを追加できる仕組みを確立することで収益をもたらすビジネスモデルの構築を目指しています。自動運転や、EV航続距離延長につながる機能アップデート、各種デジタルサービスを提供することで、ユーザーの満足度向上につながる期待も込められています。各社とも、車両ソフトウェアやOSの内製強化を外部パートナーと協力しながら試行錯誤で進めています。オンラインセールスやデジタル生産なども含め、事業全体でのデジタルトランスメーション(DX)を推進することで、コネクテッドBEV販売中心での収益増大につなげる戦略です。
本報告書は、ドイツ自動車産業が、チャレンジングな事業環境下でカーボンニュートラル化とDXを推進しながら、いかにグローバル市場における競争優位性を維持できるか、あるいは競争力を強化できるかを考察する報告書となります。製品ライフサイクル化に向けBEVを最優先しつつ、産業界全体のカーボンニュートラル化を目指して水素やEフューエルをいかに活用していくかについても焦点を当てます。脱炭素を見据えたうえでのエネルギー調達、原材料確保や技術開発において、ドイツ系及び欧州系のプレーヤー間の協業だけでなく、日本のサプライヤー、日系企業がパートナーとなってビジネスを強化できるチャンスが到来しています。OEMとサプライヤーの関係において、長期的なカーボンニュートラル達成に向け、従来のコスト優先とは異なるアプローチも重要と考えられます。当報告書をきっかけに、日本及び日系企業の関係各位が、ドイツ自動車産業への理解を深め、ドイツ系グローバル自動車企業とのビジネス関係構築及び強化につながることを心よりお祈り申し上げます。