SDVの可能性を握る半導体と獲得をめぐるメーカー競争の真相
世界自動車産業はGAFAやTeslaから始まった自動車のIoT化の波に中にあります。Software Defined Vehicle(SDV)と呼ばれる大きな波は、世界主要自動車メーカーのみならずTier1・2以下のサプライヤーを含む自動車・自動車部品業界全体の在り方を変えようとしています。従来の「ハードウェア」つまり、モノづくりを中心に成長してきた自動車産業は、利用者の目に入ってくる各種機能やサービス、関連した様々な効果で表現される「ソフトウェア」重視の領域にそのステージが移ろうとしています。
しかもその中心は自動車業界だけではなくIT業界も担うことになり、ITに強い米国とその米国をキャッチアップしたい中国を中心とした技術系IT企業は自動車向けに多様なソフトウェアの提案と実装を通じてその存在感を増しています。この分野ではIT業界主導となり自動車を巡る競争地図が変わろうとしている状況にあります。さらにIT業界では持ち前のソフトウェア開発能力に加え技術革新が進むAIをベースにさらなる付加価値を高める戦略を進めており、もはや、自動車を単なる移動手段という位置づけから、生活空間へ変えようとする、マルチファンクショナルな自動車の提案を進めています。
SDVの動きは今に始まったわけではありません。2015年頃GAFAが自動車産業への参入を試みた時期がありました。当時英語の頭文字から「CASE」と呼ばれたコネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化の4分野において、自動車業界の変革を促し、IT業界が強みとするソフトウェアとサービス領域への参画と収益事業化が狙いでした。その動きは、2020年前後に落ち着いたものの、2023年以降CASE時代と比べてもその勢いは一段と強くなり、SDVを武器にIT業界は自動車業界を侵食しているわけです。
一方、欧米系主要自動車メーカーはSDVの開発に早期から取り組んでおり、自前のソフトウェア開発と、強みである製造分野を活用して、IT企業群に対抗しようとしています。これに呼応してTier1・2以下サプライヤーもSDV開発に注力しようとしているところで、今後、SDVへのシフトが進むほど、開発と製造分野で業界の枠を超えた競争が鮮明になるでしょう。
他方、SDVを実現するために、ハードウェア制御やソフトウェア運用のそれぞれに対応できる半導体に注目が集まっております。SDVを実現するためには、超高性能半導体が必要となりますが、2024年現在、これを製造できる企業はほんの一握りです。今後、いろんな形で高性能半導体の実用化は進む見通しですが、誰が先にこういった半導体を取り込めるかによって、SDV競争構図も大きく変わっていくでしょう。
本調査報告書は、世界的なSDV時代の競争について、世界主要国の政策や規制、自動車メーカー、部品サプライヤー、関連するステークホルダーなどの戦略・動向について調査・分析をいたします。ハードウェアのみならず、ソフトウェア関連での取り組み状況についても調査し、SDVシフトが進むにつれ、予想される産業間生き残り競争についても分析いたします。
主要⾃動⾞メーカー及び関連サプライヤーの動向確認、今後のSDV分野における予測・判断材料として、当報告書をご活⽤いただければ幸いです。