競争焦点となる市場ニーズ対応製品開発力と収益化に向けたコスト削減
フォーインが独自に集計した世界29ヵ国の電動二輪車販売台数は、2021年に過去最高の892万台となりましたが、2022年に827万台、2023年に805万台となり、2年連続で減少となりました。販売減少は、世界電動二輪車販売の8割以上を占める中国で需要が落ち込んだことによります。中国では、電動二輪車(EB)、電動モペッド(EM)、電動二輪車(EV)の新規格が2019年に導入され、COVID-19感染拡大によるパーソナルモビリティ需要もあり、2020年から2021年にかけて大規模な更新需要が発生しました。しかし、2022年以降、更新需要が一段落しつつある中、不動産不況による景気後退で廉価なEBへ需要がシフトしたこともあり、EM/EV販売台数は2021年の834万台から2022年に704万台、2023年に647万台へと減少しました。
その一方で、電動車普及加速・生産促進策FAME IIを導入しているインドでは、ガソリン価格の高騰に加え、製品の新規投入が相次いだことから、電動二輪車販売台数が2023年に前年比23万台増の86万台へと拡大しました。また、電動車の購入補助金を導入したタイやインドネシアでも電動二輪車販売が2万台前後ながら、需要が増加傾向にあります。欧州では、カーボンニュートラルに向けた取り組みの一貫として、電動二輪車の購入補助金制度や税制優遇措置などを導入しており、フランス、ドイツ、スペインなど電動車比率が上昇してきましたが、2023年は比率が低下しました。しかし、今後、排ガス規制強化に加え、都市部での内燃機関車走行規制強化によって、電動車比率が大幅に上昇することが予想されます。
世界電動二輪車市場は、2035年に向けて、インド、ASEAN、欧州などにおける需要増加で成長が見込まれますが、2030年以降に少子高齢化が急速に進む中国では需要後退が予想されます。こうした状況の中、雅迪科技(Yadea)、愛瑪科技(AIMA)、浙江緑源(Luyuan)など中国の大手電動車専業メーカーは、最新の設備とデジタル技術を導入した最新鋭のスマートファクトリーを立ち上げるとともに、コスト削減や電費効率を向上する最新のバッテリーやモーター技術などを導入した製品開発に注力し、欧州やASEANを中心に海外事業の強化・拡大に取り組んでいます。世界二輪車メーカー最大手の本田技研工業は、2027年頃にインドやインドネシアに電動二輪車専用工場を立ち上げて電動車事業を本格化させます。
フォーインがこの度発刊しました本報告書「世界電動二輪車産業の2035年展望」では、世界の電動二輪車販売・生産の現状、海外事業展開を本格化する中国メーカー、現地大手スタートアップ、グローバル二輪車メーカーの電動車戦略などを分析し、2035年の世界二輪車市場・産業を展望します。貴社の二輪車事業計画立案などの一助としてご活用いただければ幸いです。