社会格差とエネルギー政策がもたらす市場成長への影響と構造変化
インドの2024年二輪車新規登録台数は、前年比184万台(10.8%)増の1,894万台となりました。COVID-19感染拡大前の2019年実績を上回りましたが、過去最高だった2018年の1,959万台より65万台少ない水準でした。同国の二輪車需要回復は、110cc超125cc以下のモーターサイクルと電動スクーターの市場拡大に加え、2024年にガソリンエンジンスクーターの需要が好調だったことによります。しかし、二輪車市場において最大のセグメントである110cc以下のモーターサイクルの需要回復は緩慢で、今後のインドの二輪車市場成長の足枷となる可能性があります。同セグメントは、ピークの2018年に846万台の市場規模がありましたが、その後のローン厳格化や農村部の経済低迷で2020年から2022年まで530万台を下回る水準となり、二輪車需要が好調だった2024年でも581万台にとどまりました。今後、二輪車を購入できない層が経済成長とともに所得水準が上昇すれば、二輪車市場の裾野が広がることが予想されますが、社会格差が大きいインドにおいて先行きは不透明です。
エネルギー自給国をめざすインドでは、石油輸入を抑制するため、電動二輪車の普及と電動部品の国産化を推進する政策を導入してきました。また、農村部の産業振興と所得水準の向上を目的にバイオエタノールやバイオガスの普及とそれらの産業発展を促進する政策も導入しています。こうした政策に対応して、二輪車業界も、電動車だけでなく、世界初のCNG二輪車の投入に加え、フレックスフュエルモデルの市販化にも取り組んでいます。CNGやエタノールステーションの整備も進む中、今後、バイオ燃料対応モデルの投入が活発化する可能性があります。
世界最大のインド二輪車市場が、2035年に向けてどこまで拡大し、電動車、CNG車、フレックスフュエル車がどこまで普及するのか、業界の関心は高いです。このため、フォーインでは、様々な視点から将来市場を予測する「インド二輪車市場の2035年展望」を発刊いたしました。同報告書では、政府のエネルギー政策、主要二輪車/電動車専業メーカーの事業戦略、直近の二輪車市場動向を踏まえながら、2035年のインド二輪車市場をパワートレイン/燃料タイプ別に予測いたしました。インド二輪車産業に携わる方々や新たに参入される方々にご採用いただければ幸いです。