HOME > マルチ・クライアント:日本自動車産業の部品取引適正化に向けた現状と課題

調査報告書:日本

マルチクライアント調査
日本自動車産業の部品取引適正化に向けた現状と課題
発 行

■ 2025年03月25日

体 裁

■ A4判、43頁 PDF

価格

■ 88,000円(税込) ※国内送料込

特別価格

PDF版+報告会セット:

■ 385,000円(税込)

月報購読者等割引あり:

■ 29,700円(税込)

※特別価格でお申し込みの場合は
備考欄へ記載をお願い致します。
ご案内用チラシPDF
PDF

印刷できます

日本自動車産業の部品取引適正化に向けた現状と課題

競争力維持の基盤となる健全なサプライチェーンへの取り組みが進展

2016年9月に「未来志向型の取引慣行に向けて(世耕プラン)」が公表されて以降、①価格決定方法の適正化、②支払条件の改善、③型取引の適正化、④知的財産・ノウハウの保護、⑤働き方改革に伴うしわ寄せ防止、の重点5分野での取引慣行適正化への取り組みが着実に進んできましたが、近年、物価高が続く中で、特に価格決定方法の適正化、つまり価格転嫁に焦点が当たっています。この30年の間に日本経済に染みついたデフレマインドによって、「効率化によって毎年取引価格を下げていくのは当たり前」という意識が、発注側にも受注側にも当然のように根付いてきました。価格転嫁を行うことは、一見すれば価格競争力を下げることのようですが、今後、物価も賃金も上がっていく新しい経済の中では、ものづくりに欠かせないサプライチェーンを中長期的に維持することが、強い産業を作っていくために必要なことだという認識が広がりつつあります。

取引適正化への取り組みは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の運用とも密接に関わっています。日本政府が2025年1月に発表した「新たな取引適正化対策の全体像」では、規制や指導の主な対象として、下請法の主な対象となるTier2~Tier3周辺の取引を想定しています。ただし適正取引の実現には、その上流の取引でも適正化が進むことが不可欠であり、自動車OEMや大手Tier1などTier上位における意識の浸透が求められています。2025年6月頃に改正される予定の「パートナーシップ構築宣言」のひな型では、「サプライチェーンの頂点企業が、直接の取引先の更に先に存在する取引先までの価格転嫁を見据えた価格決定を行うこと」を表明することなどが追記される見通しであるほか、日本自動車工業会や日本自動車部品工業会など業界団体も下請法や世耕プランに準拠した指針に基づき、下請法の対象外も含めた業界全体で取引適正化を推し進めています。

一方で、下請法や世耕プランは単なる弱者救済の施策ではなく、あくまで公正な取引環境の実現が目的となっています。例えば「失注するのが怖くて値上げ要請を言い出せない」「価格取り決め時に事業構造を丸裸にされるのは厳しい」といった中小下請企業でよく聞かれる困り事に対しては、自社の競争力を上げることや強みを理解することが重要だとの見解を政府は示しており、経営者や担当者が知識や情報を持つことが交渉を有利に進める上で不可欠としています。知識や情報の獲得を支援するための経営相談窓口や補助金/支援制度など政府のサポートを積極的に活用することを課題解決の第一歩として欲しいと担当省庁は呼び掛けています。

本書「日本自動車産業の部品取引適正化に向けた現状と課題」は、日本の自動車産業界における取引慣行適正化に向けた進捗状況と課題を、Tier1やTier2企業を中心に、発注側と受注側の双方の視点から価格交渉などの取引における現状と課題について、キーパーソンへのインタビューを基に取りまとめております。また政策サイドの認識や取り組みについての理解を深めるために関係省庁へのヒアリングも実施し、中小企業に対する適正価格・適正取引実現に向けた交渉の方法など、成功例を交えながら提言を行っています。また20年ぶりとなる下請法の大幅改正や、下請け中小企業振興法の基準改正など、取引慣行適正化を促進するための直近の法改正についても取りまとめています。

本レポートが受発注企業双方の合意による適正価格交渉や取引条件実現に向けた参考資料として、また取引先との良好な関係を構築するための参考資料として、関係する方々の事業発展の一助となることを祈念いたします。


第1章
総論
  
取引慣行適正化に向けた日本政府の取り組みと現状
  
新たな取引適正化対策:Tier上位も含めた包括的な対策で取引適正化を強力に推進
  
日本、新たな取引適正化対策の全体像(2015年1月発表、全産業が対象)
  
下請法改正:買いたたき抑制や支払期間短縮、報復措置禁止対象の拡大など取引適正化を更に推進
  
日本、下請取引関連の法改正に関連する最近の動向
  
下請Gメンによるヒアリング調査:訪問先の声を基に法改正・基準改正へと働き掛け、適正取引の推進に貢献
  
日本、下請Gメンによる取り組みとヒアリング調査結果の概要(2025年1月時点)
  
日本、「パートナーシップ構築宣言」登録企業(2025年3月18日時点、「5-23輸送用機械器具製造業」のみ)
  
世耕プラン:支払条件の改善は進むが、コスト負担適正化や価格交渉適正化は今後の焦点
  
日本、取引慣行の適正化に向けた「世耕プラン」の概要と取り組みの経緯
第2章
サプライヤー/関係省庁ヒアリング
  
取引適正化に向けた関係省庁/サプライヤー各社へのヒアリング
  
経済産業省中小企業庁:取引適正化には下請企業の競争力強化、知識・情報を持つことも重要
  
経済産業省中小企業庁への取引慣行適正化に関連するヒアリング(2025年2月20日実施)
  
トヨタと取引関係の強いTier2サプライヤー①:現金払いは概ね実現
  
トヨタグループを主要取引先とするTier2メーカー、「世耕プラン」による取引慣行の変化に関するヒアリング
  
トヨタと取引関係の強いTier2メーカー②:Tier上位による値上げ要請を言い出し易い環境づくりに期待
  
トヨタGr.を主要取引先とするTier2企業への取引慣行適正化に関するヒアリング(第2弾)
  
トヨタ以外の自動車OEMを主要取引先とするTier1メーカー①:現状の取引慣行への大きな不満はないが、
公取等の指導に基づき適正化に取り組む
  
日本の自動車OEMを主要取引先とするTier1企業への取引慣行適正化に関するヒアリング
  
トヨタ以外の自動車OEMを主要取引先とするTier1メーカー②:取引慣行への大きな不満はないが、理由のない値下げ要請に対しては是正に期待
  
日本の自動車OEMを主要取引先とする「下請け」区分のTier1企業への取引慣行適正化に関するヒアリング
  
多種多様な取引関係を持つTier1/Tier2サプライヤー各社:労務費上昇への理解が浸透したと実感
  
日本で事業展開するTier1/Tier2サプライヤー各社への取引慣行適正化に関連するヒアリング(2025年1月実施)